ヨーロッパの祝祭

ヨーロッパ 祝日暦
11月
12月1月2月
3月4月5月
6月7月8月
9月10月11月

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作成 : 工藤龍大

この祝祭暦は、ドイツ語文化圏を中心にしています。
場合によっては、他の国々の祝祭・風習についても説明します。



<言葉の説明>
救難聖者・聖女
危急の死や苦難におちいった人々を救済してくれる聖者・聖女
移動祝祭日
キリスト教会の行事は、1月6日の「公顕祭・三王礼拝」の後の日曜日を起点として、年間の行事日程がきまる。
そのため、復活祭などのような宗教行事は、年ごとに日付がかわる。
そこで「移動祝祭日」と呼ぶ。


11月

11日
聖マルチン祭

ヨーロッパの民間暦では、この日が一年の終りとなる。
どうじに、この日から冬がはじまる。

聖マルチンの祭は、子どもが主役だ。
堤燈を持った子どもたちが行列をつくって、聖マルチンに扮した市長・村長さんを町や村の入り口(いまでは広場が多いとか)に迎えに行く。行列の先頭には大人のブラスバンド、次に合唱隊、そして張りぼてのガチョウを台座に載せて少年たちが担ぐ。ガチョウは聖マルチンの日に食べることになっているご馳走だ。その後に、子どもたちが続く。
聖マルチンは中世風の鎧兜に、裏地が赤のマントをはおって馬に乗ったまま、街の広場で子どもたちを待っている。
そして、迎えの行列と合流して、教会へおもむき、そこで子どもたちに菓子や果物をふるまう。

子どもたちはその後で持参した古いロウソクに、あらたに燧石(ひうちいし)でともした火をもらって家に帰る。


聖マルチンはドイツやフランスで、子どもの守護者として人気のある聖人だ。
(フランスでは、聖マルタンという)

病気治癒・ワイン作りの守護聖人でもある。

実在の人物で、4世紀ころ、ローマ帝国の騎士身分だったが、キリスト教に改宗して修道者となる。
フランスのポワティエにヨーロッパ最初の修道院を造った。
おびただしい逸話や伝説がある。

22日
聖ツィツェリア(セシリア)の日

音楽と楽器の守護聖女。詳細は不明。

25日
聖カタリーナ(アレキサンドリアの)の日

車輪製造業者の守護聖女。詳細は不明。

移動祝祭日 : 11月27日以降の最初の日曜日から
第一待降節(アドヴェント)
30日
聖アンドレアスの日

いまは特別なお祭りはない。

未婚の若い女性が、いろいろな結婚占いをする日である。
例えば、呪文を唱えながら、後ろ向きにベッドに倒れ込む。
すると、将来の結婚相手の顔が脳裡に浮かぶ。

また鶏小屋に女性が入ったときに、雌鶏が鳴けば結婚はなし。雄鶏がときの声をあげれば目出度く結婚できる。

またこの日の朝に、井戸や鏡を覗き込むと、将来の結婚相手の顔が浮かぶとか。

11月30日は、グレゴリオ暦以前は大晦日だった。
そこで、一年の吉凶を占う占いをしたなごりがこうした習俗となって残っている。

アンドレアスは聖ペテロの弟である。
もとは兄と同じガリラヤの漁師だった。
ギリシアで殉教した。斜めに交差した十字架につけられて刑死した。
イギリスの国旗は、十字架と斜め十字架を組み合わせた図柄だという。

面白いことに、アンドレアスは民間信仰では結婚の守護聖者だが、カトリックでは漁業関係者の守護聖者とされる。
アイルランドの守護聖者でもある。

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12月

4日
聖バルバラの日

救難聖女。鉱山・森林での作業を保護する。

6日
聖ニコラウスの日

小アジアのミュラの司教。
航海・修道院・学生・子どもの守護聖者。

13日
聖ルチアの日

眼・ガラス製造業・農業の守護聖女。
スウェーデンでは、<聖ルシア祭>として盛大に祝う。
この日が、古い暦で冬至にあたるので、北欧では太陽がちからを増すようにと、古来さまざまな儀式がおこなわれた。
聖ルシアが<光の聖女>として、スウェーデンに導入されたのは、18世紀。
以後、スウェーデン人にとっては、たいせつな祭典となる。

聖ルチアはイタリアのシチリア島シラクサ生まれの殉教者。

21日
聖トマスの日

聖トマスは十二使徒のひとり。キリスト復活を最後まで疑ったので、その祭日が一年でいちばん最後になった。

この日、魔女や悪魔が現われるので、家に侵入されないように、ドアやパンに十字架を刻む。
翌年の天候や農作物の出来、恋の占いをおこなう。

22日
冬至の日
24日
クリスマス・イブ
25日
キリスト降誕祭
31日
ジルヴェスターの夜(大晦日)

教会の鐘、花火、爆竹などを鳴らして、新旧の年を送迎する。

聖ジルヴェスターは、家畜の守護聖者。
聖ジルヴェスターとは、教皇シルヴェストス一世(在位 314-335)のこと。

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1月

1日
聖母マリヤの祭

1月1日が年の始まりとなったのは、ローマ帝国から。
だが、中世のヨーロッパでは、12月25日または1月6日が新しい年のはじまりだった。
1691年に教皇インノケンティウス十二世が、太陽暦の1月1日を新年とした。

5日
三王礼拝の前夜

薬草や香草を燻して、水を潔める。

6日
公顕節・三王礼拝

キリスト教の教会行事は、この日から後の日曜日を起点として、いろいろな行事の日程をきめる。

17日
聖アントニウスの日

牧人・家畜の守護聖者。皮膚病、熱病からも護ってくれる。
もとは、砂漠の苦行者。

20日
聖セバスチアンの日

病人の守護聖者。ペストからも護ってくれる。
殉教聖者。

25日
パウロ回心の日

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2月

2日
マリヤの光のミサ

冬の終り。この日から春がはじまる。

5日
聖アガタの日

火・火災などから守る守護聖者。この日、かまどやパン焼き窯を潔める。

6日
聖ドロテアの日

救難聖女。園芸の守護聖者。

11日
ルルド聖母出現記念日
22日
聖ペテロの日

ペテロ教皇座就任の日。
<こうのとりの日>ともいう。

移動祝祭日 : 復活祭の42日前
謝肉祭(ファスナハト)

いわゆるカーニバルである

移動祝祭日 : 復活祭の41日前
灰の水曜日

この日から四旬節(ファスト)がはじまる。期間はこの日から復活祭前日の土曜日までの40日間。

移動祝祭日 : 四旬節(ファスト)の第一日曜日
四旬節(ファスト)の第一主日

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3月

12日
大グレゴリオの日

音楽・教師・学生・市長の守護聖者。
もとは聖グレゴリオ教皇一世。グレゴリオ聖歌の創始者。

19日
聖ヨセフの日

手仕事職人・教会・臨終の人の守護聖者。

移動祝祭日 : 四旬節(ファスト)の第四日曜日
薔薇の日曜日(レターレ)
25日
マリヤの受胎告知の日

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4月

1日
四月馬鹿の日
移動祝祭日 : 復活祭の一週間前
棕櫚の日曜日

この日から「聖週間」がはじまる

移動祝祭日 : 復活祭の前週の木曜日
緑の木曜日(晩餐節)
移動祝祭日 : 復活祭の前週の金曜日
嘆きの金曜日
移動祝祭日 : 復活祭の前日
悲しみの土曜日
移動祝祭日
復活祭

春分の日以後の最初の満月の後にくる最初の日曜日。
教会暦の移動祝祭日は、この日を基点にして毎年決定される。

移動祝祭日 : 復活祭の翌日
復活祭の月曜日

郊外に散歩へいったり、泉を潔めたりする風習がある。

移動祝祭日 : 復活祭の一週間後
白い日曜日

少年少女が堅信礼を受ける祭日。

23日
聖ゲオルクの日

オーストリアは、24日に祭る。

聖ゲオルグは、騎士・家畜の守護聖者。
この日を放牧の節目にする地方もある。

30日
ヴァルプルギスの夜

この夜に、ドイツのブロッケン山や、カンデル山地などに魔女・魔物・妖怪が集まる。
聖女ヴァルプルガがこれらの魔を制圧することになっている。
これによって、夏が冬を圧倒して、五月を迎える。

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5月

1日
マイターク(メーデー)

夏の到来を祝う五月祭の日。五月柱(メイポール)という風習がある。

11日
聖イシドールの日

聖イシドールは、スペインの農耕の守護聖者。
もとはセビリヤの大司教だった。

12日
聖パンクラティウスの日
13日
聖セルヴィウスの日
14日
聖ボニファティスの日
15日

この三聖者を「氷の聖者」という。このころ、霜や薄氷の害があるため。
三聖者は霜や氷の害から葡萄や畑を護ってくれるとされる。
ボニファティウスはフリースランドで殉教したので、「ドイツの使徒」と呼ばれる。
(6月5日に祭る地方もあるという。)

聖ゾフィー(ソフィア)の日

「寒さのゾフィー」と呼ばれる。天候の変化を気遣う聖女。

移動祝祭日 : 復活祭の40日目
キリスト昇天祭
25日
聖ウルバンの日

聖ウルバンは、葡萄栽培とワインの守護聖者。

移動祝祭日 : 復活祭の50日目
精霊降誕祭

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6月

移動祝祭日 : 下記参照
聖三位一体祭

精霊降誕祭の後の最初の日曜日。

移動祝祭日 : 下記参照
聖体拝受祭

聖三位一体祭の次の木曜日。

15日
アルプス地方の山開きの日

アルプス地方では、この日を山開きとする。山へ放し飼いにするために、家畜を連れてゆく。

22日
夏至の日
24日
聖ヨハネ祭

バプテスマのヨハネの誕生を祝う。
夏至の火を焚いて、歌い踊る。

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7月

8日
聖キリアンの日

ワインの守護者。
聖キリアンは、独フランケン地方の殉教者。

22日
聖マグダレーナの日

罪を懺悔する女性と、仏プロヴァンス地方の守護聖女。
聖マグダレーナは、ガリアの聖女。

23日
「犬の日」のはじまり

シリウス星が現われて、夏の酷暑が到来する。

24日
聖クリストフォルスの日

救難聖者。
聖クリストフォルスは、幼児キリストを背負って河を渡ったとされる。

25日
聖ヤコブの日

この日を節目に、麦の刈り入れをおこなう。
聖ヤコブは、福音記者ヨハネの兄弟。スペインに布教して、のちにユダヤに帰り殉教したと伝えられる。
巡礼・交易・農耕の守護聖者となる。

26日
聖アンナの日

収穫祈願をおこなう。

聖アンナは聖母マリアの母。聖家族の祭のひとつ。

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8月

5日
雪のマリヤの日

サンタ・マリヤ・マジョーレの記念日。

15日
マリヤ昇天祭

薬草の潔めをおこなう。「マリヤの三十日」のはじまり。

24日
聖バルトロメオの日

漁師の守護聖者。この日から漁労を解禁にする場合もある。

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9月

8日
聖母マリヤ誕生の日

少女の日。

12日
聖母マリヤ命名の日

この日に、少女が洗礼を受ける場合が多い。

23日
秋分の日

この日から、秋がはじまる。

29日
ミカエル、ガブリエル、ラファエル大天使祭

アルプス地方では、この日に家畜を山から降ろして、山を閉じる。

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10月

不定
収穫祭

葡萄摘みなどの収穫祭は、10月に行なわれることが多い。

7日
ローゼンクランツの祭

1571年にスペイン・ヴェネツィア連合軍がオスマン・トルコを破ったレパントの戦いを記念した祭。詳細は不明。

31日
万聖節前夜

あとの「万聖節」の項目も参照。
アメリカとイギリスで「ハロウィーン」として祝う。

カボチャやヒョウタンをくりぬき、なかにロウソクをいれる細工物(jack-o'-lantern)を作って、玄関先や窓辺に飾る。
子どもたちが、魔女や悪魔・妖怪に仮装して家々を訪れ "trcik or treat"と云ってお菓子をもらう。
ところで、これは1980年代にアメリカからイギリスへ伝わった風習だった。(「英国を知る辞典」(研究社出版)による。)

古くからのしきたりでは、少女たちが結婚相手を占う「まじない」をした。

現代のアメリカでは、中高校生がこの日にいたずらをする風習があって、警察も厳戒体勢をとる。青少年の悪ふざけを予防するために、教育機関などではハロウィーン・パーティーを開いたり、仮装パレードをおこなう。
さらに、この日のパーティーでは"apple bobbing" または "apple-ducking" というゲームがおこなわれる。
これは、水をいれた桶にリングをいれて、手を使わないで口だけで噛み取るというもの。

ハロウィーンは、もともとは古代ケルト人の信仰したドルイド教の秋の収穫祭だった。
これは、収穫をいわい、太陽神に感謝と収穫物をささげ、ご馳走を食べるというもの。
焚き火して、自然の脅威をあらわす魔物(デーモン)、魔女、害獣であるもぐら・野ねずみ・狼のわら人形を燃やした。
仮面を被って仮装するのも、魔物たちを威圧して追い払うためだった。
10月31日の夜に、こうした行事をおこなうことは、古代ケルト人からの伝統である。

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11月

1日
万聖節

835年に、ドイツでの全殉教者の霊をなぐさめるためにおこなわれた祭典。
教皇グレゴリウス4世(在位 827-844)が、全世界の教会で聖者をしのぶ記念の祭とした。

教会でミサののち、夕方家族が墓地へいって花輪や花束、果物を供える。水盤や壷に新しい聖水をいれて、それには樅の枝をそえる。
「シュトリーツェル」というパンを焼いて、子どもが貧しい人々に施す習わしがある。

殉教者と布教に献身した聖者を祭る日とされる。

2日
万霊節

家族の死者と、祖先の霊を祭る日。

死者や先祖の霊(祖霊)を迎えて祀る祭礼が、もともと古代ゲルマン人の頃からあった。
しかし、キリスト教がひろまって、クリスマスなどの行事が年末に集中するので、古代ゲルマン時代の歳末であった十一月にこの行事を移動した。

黒い喪服を着て墓地へゆき、パンや穀物、生前の好物をそなえる。赤い容器にロウソクをともす。
「ゼーレンブロート」「ゼーレンツォブ」という丸い小さなパンを、おさげ髪のようにつなげて、供える。

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参考文献――
『ヨーロッパ歳時記』(植田重雄著)

上記いがいの本も参照。文責は工藤。


Copyright © 1999, Tatsuhiro Kudo. All rights reserved.