お気楽読書日記:12月

作成 工藤龍大


12月

12月20日

今週も忙しく読書がすすまない。
『エデンの東』(ジョン・スタインベック)を読み始めたが、まだ一巻目の途中だ。
毎年のことだが、年末になるとかけこみ発注で急に仕事が忙しくなる。

アニメでは、「東のエデン」(本作とはまったくの無関係)が人気だった2009年。
リアルタイムで深夜アニメも劇場版も見ていない。
頼みは、ネット配信かDVD。
流行を三歩以上後追いしている。
これも社会人の宿命だ。
まあ同世代ではすでに語り合う同志もいないので仕方がない。

同世代が見ているとしたら、韓流ドラマ?
ただし、こちらも小説とはほとんど関係ない。

韓流ドラマとも「東のエデン」とも無関係な小説に、なぜ今さらというのも、野暮な話でだれも読まない本を読むというのがわたしのポリシー。
べつにジェームス・ディーンが懐かしいわけでもない。

ジェームス・ディーンの代表作の原作である小説には、映画には登場しないあるキャラクターがいる。

このキャラクターが長年気になっていた。
なんとも情けない話だが、原作に忠実なアメリカ製テレビ・シリーズがあり、それを見ていて、そのキャラクターに出会った。

俳優の顔も忘れたが、いまだに気になっている。
そのキャラクターは、アメリカに移民した中国人だ。

かれが小説の中で重要な発見をすることにより、兄弟の憎悪というストーリーが大きな展開をみせる。

まだ謎の中国人は登場していない。
とにかく時間をみつけて読み続けようと思う。

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12月05日

今週読んだ本は、
『ハゲタカ』(真山仁)

一気に読ませる娯楽小説だ。
金融関係に疎い自分でも楽しく読めた。
実際に起きた経済事件を連想させる話が多く、銀行や証券業界に詳しければもっと楽しめたと思う。

こちらに知識がないので、読者向けに解説された部分を読んで「ほーっ」と驚き、おもむろに快刀乱麻の主人公鷲津政彦の勝利に「おっ!」とにんまりする。
ジェットコースター的に勝ち続ける鷲津に巻き込まれて読み進める快感はやめられない。

ただ読み終わってみると、惨敗し続けるライバルたちがなんとなく物足りない。
あまりにも類型的ないやなヤツらなので、少しも同情がおきないけれど、鷲津の一人勝ちというのも物足りない。

考えてみれば、この小説は劣化腐敗する日本の企業経営者を、ハゲタカ ファンドの鷲津がこらしめる「世直し旅」みたいなものだから、悪徳商人・悪徳代官があまり魅力的では困る。

ストーリーの構成からすると、しごく正しい構図ではある。

テレビ ドラマ版の「ハゲタカ」とは、キャラクターも含めてまるで違う物語だ。
ドラマの方は翻案というべきもので、原作小説とは似ても似つかない。
情報小説としてみれば、原作の圧倒的勝利といえる。実際、比べるのも気の毒なくらいだ。

ただ甘い人間ドラマだったテレビ ドラマと、原作小説のどちらが好きかといわれると、微妙だ。人にもよるだろうが、人間が甘いわたしには、ドラマの方が楽しかった。

「面白さ」なら小説なのだが、「楽しさ」はドラマ。
どこが違うかといえば、小説は復讐譚なのに、ドラマは人間回復(安易だったかもしれないが)の物語だった。

主人公鷲津のスーパーマンぶりが光る小説。
鷲津がどん底からかつての敵に助けられて立ち上がるテレビ ドラマ版。

「ハゲタカII」の設定も一部含むドラマのほうが、厚みがましているのは当然だろう。この点をもって、真山仁のストーリーテリングを批判するのはフェアではない。

ただ自分としては、こういう小説を読みたいというものがあり、原作小説がその点では物足りないということを言いたかった。

わがままな感想だが、これが正直なところ。
いくつになっても、人間が成長する物語を読みたいというのが、わたしの趣味だ。

ところで、小説の後書きによると、「ハゲタカファンド」は20世紀の商売で、世紀をこえてからあまり流行らない商売らしい。一言で言って、うまみがなくなったとのこと。

「かつてネフィリム(ハゲタカファンド)ありき。かれら古の英雄なり」(創世記?より)

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